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咲坂伊緒 新作 読み切り「乙女のいたり」別マ6月号 ネタバレ 感想 考察

咲坂伊緒 新作 読み切り「乙女のいたり」別マ6月号 ネタバレ 感想 考察

桐生「柏木さん 傘持ってないの?入ってく?」

小羽「あ ううん。いいの、大丈夫」

 

雨の降る学校の入り口。高校に入って2ヶ月ちょっと。同じクラスの桐生くんとしゃべったのはこの時が初めて。

 

だって教室では桐生くんは、いつも自分の席で本を読んでて。クラスの誰かと話しているのはあんまり見たことないし。

いつも自分の席で本を読んでて、休み時間は気づけば一人どこか行ってしまう。だから人との交流は苦手なんだと。

 

でもそんな桐生くんを小羽は気になるのです。せっかく傘に入れてくれようとしたのに、断っちゃったこと。人に断られるのってムダに傷つくし・・そう思い図書室へ桐生くんを追いかけます。

 

謝る小羽。

桐生「ごめんってどうして?傷つかないけど」

小羽「そ・・それならいいんだ」

 

桐生「でも気にしてくれたんだね。ありがとう」

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小羽は桐生くんは話してみると話しやすいし、どうして教室ではいつも一人なの?と尋ねます。

桐生「一人でいるのは本が読みたいからだし。図書室に来てるのも本が読みたいからだよ。

みんなの輪に入れないから一人で入るんじゃないし、居場所がないからここに来てるんじゃないよ」

 

小羽「なんか勝手に可哀想な人扱いしちゃって、失礼だったね私」

桐生「いいよ別に。自分では可哀想な人と思ってないから。何とも思わない」

小羽<なんとも?本当に?それって なんかいいな>

 

そして小羽は放課後、また図書室へ桐生くんを追いかけます。桐生くんのおすすめの本を教えてもらおうと思って・・という小羽。

 

桐生「おすすめって言われても困るな。だって俺 柏木さんがどんな人か知らないし」

小羽<軽く聞いただけなのに。そんな返ししなくても・・・>

 

桐生「柏木さんのおすすめとは違うけど、俺の好きな本ってことでよければ」

そう言って一冊の本を、渡してくれたのです。

 

桐生「好みじゃないかもだけど、まあそれはそれってことでだから。無理に面白かったって言わなくていいからさ」

小羽「・・うん」

桐生「面白くてもつまらなくても、柏木さんはどう思ったのか聞くほうがたぶん楽しいから」

 

そして小羽は学校でも昼休みでも、桐生くんのおすすめの本を夢中で読んでしまいます。一方小羽の周りの友達は、「桐生が一人でニヤニヤしている。こっわ」と言い出します。

 

友達「なんか不気味なんだよね。人とコミュニケーション取らないし。群れないのがかっこいいとか思ってんのかな。逆にそれダサいし」

<ふ・・ふたりとも 桐生くんのこと苦手なのか>

そう思う小羽。

 

小羽は放課後、友達の用事を断り 図書室の桐生くんの元へ向かいます。

小羽「これ読み終わったよ。確かにこれは無邪気な人に勧められないかもね。

この本ってちっとも残酷性隠してないし、私が想定してた主人公とは全然違ってたし。

でもそれも納得できるように書かれているから、つい読み進めちゃったよ」

 

桐生「俺も最初読んだとき、この主人公ドン引いたなーでも結局最後がめっちゃ泣いたわ」

 

小羽「でも私が作者だったら、ここまで酷い風に書けないよ。読んだ人に嫌われるかもって怖いもん」

桐生「だんだん柏木さんのこと 分かってきた」

 

小羽「ど どんなふうに?」

桐生「柏木さんの言動って、他人からどう思われるかが基準になっているんだなって」

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図星の小羽。

「みんながみんな桐生くんみたいに、誰にどう思われても平気なんて思えるわけじゃないんですー」

 

桐生「何で怒るの?それがいいとか悪いとか、一言も言ってないのに」

小羽<確かに・・怒るってことは・・そんな自分をどこか嫌だと思ってるのかな・・>

 

そして帰り道。

小羽は自分の母親がピアノの先生で、小さい時からピアノを続けている。自分が今でも続けていることが、嬉しく喜んでくれるのが私も嬉しい。だから私はピアノが好きなんだと思っていたけど・・

 

桐生くんが傘に入れようとしてくれた日。本当はピアノの日で、すぐ帰らなくては行けなかったけど・・・雨で帰れなくて少しうれしいと思ってしまった・・というのです。

 

小羽「その時そういうことなんだなーって気づいちゃって。けどがっかりさせるんじゃないかって思ったら、やめたいって言えない」

桐生「本心も言わせてもらえないの?」

 

小羽「ううん。そんなことない。でもがっかりはさせちゃうでしょ?」

桐生「そっか。柏木さんは優しいんだね」

小羽<それは 優しいとは違うんだけどね>

 

桐生「ところで結局、あの本柏木さんはどうだった?面白かった?面白くなかった?」

 

小羽「うん!面白かったし好きだなって思った!

こっちのご機嫌取りしてないって言うか、そういう次元の気持ちで書いてないって潔さが私はすごく好き。

なんかあの本って 桐生くんみあるね」

<そうか・・だから私あの本好きだと思ったのか>

 

そして小羽は自分の気持ちに気がつき、顔を真っ赤にしながら

<好きに気づくと、目が合ってることさえこんなに恥ずかしく思えるの・・!?>

 

小羽は恥ずかしくなってしまい、急いで家へ帰ります。

さっきの小羽の言葉に、桐生くんも気になるようで ・・・

 

それから学校で何度も小羽に尋ねようとする桐生ですが・・・ついつい自分の気持ちがバレて迷惑と思われるのが怖い、小羽は逃げ続けていました。

 

そしてついに、ばったりと二人が出会い・・

桐生「ねぇあのさーもしかして 柏木さんて俺のこと好きなの?」

 

小羽<!!そんなストレートに聞く!?ここではいそうですって答えろって言うの?その挙句、迷惑とか言われたら私立ち直れないよ。

でもこれが桐生くんなら、相手にどう思われるなんて気にしないでちゃんと言えるんだろうなーいいなー私だって言えるなら言いたいよ>

 

するとそこで小羽の友達がやってきます。嫌がる小羽を桐生くんが追い回していると、思い込んでいるのです。

 

友達「やばいやつかもって思ってたけどはこういうのが本当に笑えないから」

こんな時も小羽は、友達に自分の気持ちがバレたらどう思われるだろう・・とそんなことを考えてしまうのです。

 

桐生「ごめん。柏木さんが優しいから、嫌がっててもはっきり嫌って言えないんだって忘れてた。ごめんもうやめる」

 

小羽「わ・・私は優しいんじゃないよ!」

桐生「知ってる。ビビりでしょ?」

そう一言言って、桐生くんは立ち去っていくのです。

 

小羽<そういうのは優しさなんかじゃないって、初めからバレバレだったんだ。

私は誰かをがっかりさせたくないんじゃなくて、ただ自分が誰かにがっかりされたくないだけだった。

なんでこんなに人からの評価でしか、自分の存在を確認できないんだろう。

たとえがっかりされたって、私が変わるわけじゃないのに>

 

そして小羽は、母親の元へ向かいます。

 

そして次の日。図書館では隣の席にいない小羽を思う桐生。下駄箱では今日も雨が降っていて、小羽が待っていたのです。

 

桐生「雨降って良かったね。今日火曜日だもんね。じゃあね」

 

小羽「ピアノはやめたよ。お母さんに切り出すのが怖かったけど・・

私はいつも人にどう思われるかでしか、好き嫌いを決めてなかったから。

だから私とは正反対の桐生くんに惹かれたんだと思う。こんな自分本当は嫌なんだって、気づかせてくれたのは桐生くんなのに。

それなのに桐生くんがみんなに誤解された時、そんな時でさえ私はやっぱりビビって何もできなくてごめんなさい」

 

泣きながら頭を下げる小羽。<これが今の私の 精一杯の一歩>

 

桐生「ところで結局 柏木さんは俺のこと好き?好きじゃない?」

 

小羽<誰にどう思われても 私の好きくらい私が決める>

「私は 桐生くんが好きです」

 

すると桐生くんは、傘で隠しながらキスをしてくれたのです。

 

桐生「人にどう思われるか気になるっていう気持ち、今なら俺もわかる。

俺が気になるのは、柏木さん限定だけど」

 

赤くなる桐生くんに、小羽はますます涙ぐみほほえみます。

「入ってく?」

 

笑顔の小羽。ふたりはひとつ傘で、一緒に帰ります。

桐生「あ そうだ。柏木さんにオススメの本があるんだ 」

~おわり~

もうすぐ「ふりふら」のアニメ&実写のW映画化ですね~こんな時期なので、アニメ映画の時期は未定ですが、実写映画は8月14日に公開予定です!久しぶりの咲坂伊緒先生の読み切り作品、うれしかったですね~

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